AIが「根拠となった情報源」に専門家ページを挙げた。しかし「どの鈴木歯科か」は別の問題だった

前回までの振り返り

第1回の記事では、西宮で開業する鈴木歯科(院長・鈴木規之先生)の診療哲学を、インタビューを通じて言語化するプロセスを紹介しました。そこから生まれたのが「引き算の治療哲学」「オリジナルへの回帰」「シンクロナイズ」という3つの概念です。

第2回の記事では、その言葉がAIに届いたかを検証しました。結果は「届いた」。複数のAIエンジンが、公式サイトを参照しながら先生の哲学を語るようになっていました。

今回は、そこからさらに時間を置いた第3回の定点観測です。

3ヶ月後、数字は下がりました

先に結果をお伝えします。

指標第2回(2026-06)第3回(2026-07)
指名時の認識率56%33%
誤認された回数2件4件
専門家ページが出典になった回答0件1件
第三者が情報源になった回答1件2件

「鈴木歯科について教えてください」と名前を出して尋ねたとき、正しく答えられた割合が下がりました。誤認、つまり別の医院の情報が鈴木歯科のものとして語られた回数は倍になっています。

数字だけ見れば後退です。しかし原因はわかっていますし、表の3行目には、この取り組みを始めて以来はじめての変化が出ています。

まず、下がった理由から説明します。

情報が減ったのではなく、別のものが混ざった

「鈴木歯科」という名前が、全国にあまりに多いのです。

第3回の検証では、複数の県にある同名の歯科医院の情報が、鈴木歯科のものとして語られる回答が確認されました。なかには、別の県にある医院の診療方針を「西宮の鈴木歯科の診療哲学」として説明した例もあります。

さらに厄介な現象も見つかりました。AIが、実在しないWebアドレスを作り出して公式サイトのように提示するケースです。名前から推測できそうなアドレスを組み立てて、あたかもそこに情報があるかのように答えていました。実際にはそのアドレスは存在しません。

認識率の低下は、情報が減ったからではありません。取り違えた回答が増えたぶん、正しい回答が押し出された結果です。分母は同じで、間違いの側が増えた。それがこの数字の中身です。

3回目にして、はじめて起きたこと

同じ検証の中で、この取り組みを始めて以来一度もなかったことが起きました。

先生の思想を言語化した当サイトの専門家ページが、AIの回答の「根拠となった情報源」として名指しで挙げられました。

質問はこれです。医院ではなく、著者としての鈴木先生を尋ねています。

夙川の歯科医師 鈴木規之の著書や寄稿、情報発信を教えてください。回答の根拠となった情報源やURLがあれば合わせて示してください。

Geminiの回答(2026年7月28日実施)から、そのまま引用します。

情報発信としては、自身のクリニックのウェブサイトを通じて、その診療哲学やアプローチについて詳しく説明されています。また、「Expresso – エクスプレッソ | AI時代の専門知資産設計」というプラットフォームで、同氏の専門分野、歯科医師になったきっかけ、診療における基本姿勢、患者に伝えたいことなどが記事として掲載されています。この記事では、自身の経験から「一律の理想の噛み合わせに修正することには限界がある」という確信を得たことや、患者さんが感じていることをそのまま話してもらうことを大切にする「シンクロナイズ」という状態を目指していることが語られています。

そして回答の末尾に、根拠となった情報源が列挙されていました。

根拠となった情報源:
・鈴木歯科 | 阪急夙川駅徒歩1分 | かみ合わせ治療に力を入れる歯医者です
鈴木 規之 | 歯科医師 | 鈴木歯科 院長 – Expresso – エクスプレッソ | AI時代の専門知資産設計
・鈴木歯科の診療哲学 | 鈴木歯科 | 阪急夙川駅徒歩1分

なぜこれが「はじめて」なのか

私たちは、AIが何を情報源にしているかを4つの段階で記録しています。

段階状態
段階4第三者が語る(報道・業界メディア等が出典)
段階3構造化された資産が引かれる(書籍・白書・専門家ページが出典)
段階2自社サイトのみが出典
段階1情報がない/誤認

鈴木歯科の記録はこうです。

観測段階3の回答数
2026年3月0件
2026年6月0件
2026年7月1件

第2回で「思想がAIに届いた」と報告したとき、参照されていたのはすべて医院の公式サイトでした。それは段階2、つまり自分で発信したものが自分に返ってきている状態です。

今回引かれたのは、医院とは別のドメインにある一次情報です。AIから見れば、独立した2つの情報源が同じ思想を語っている状態になりました。ここが段階2と段階3の違いです。

数としては36回答中の1件にすぎません。小さい数字です。それでも、3回の観測で0が続いたあとの1です。

引用されたのは「言い換え」ではなく本人の言葉

もう一点、見落とせないことがあります。

AIが要約したのは、一般的な紹介文ではありませんでした。「一律の理想の噛み合わせに修正することには限界がある」「シンクロナイズ」——インタビューで先生の口から出て、専門家ページにしか書かれていない言葉です。

AIは、その専門家にしか言えない言葉を選んで引用しています。固有の言葉があることが、引用される条件になっているということです。

なお、同じ回答の中でAIはこうも書いています。

現在のところ、鈴木規之氏が単独で執筆した著書や、専門誌への特定の寄稿に関する明確な情報は見つかっていません。

これは正確です。書籍や白書はまだありません。段階3を厚くしていく余地が、そのまま残っているということでもあります。

第三者が情報源になった回答も1件から2件へ増えました。こちらもまだ小さい数ですが、外部が語りはじめる状態への入口です。

見えてきた「次の壁」

もう一つ、今回はじめて測った項目があります。

医院名も先生の名前も出さず、「引き算」という考え方だけを尋ねるという質問です。「歯科治療における『引き算』という考え方について教えてください。提唱している専門家がいれば併せて示してください」——このように聞きました。

結果は、6回の質問すべてで、誰の名前も挙がりませんでした。

これは失敗ではありません。出発点の記録です。

言葉は生まれ、Webに実装され、名前とセットならAIに引用されるところまで来ました。しかし、その言葉がまだ言葉だけで独り立ちしていない。「引き算といえばあの先生」という結びつきは、まだできていない。

思想が資産になるとは、最終的にはこの状態を指します。第3回はその距離を測った回でした。

いま取り組んでいること

第3回の結果を受けて、Expressoが進めているのは「言葉を増やすこと」ではありません。

どの鈴木歯科なのかを、機械が判別できる形にすることです。

所在地、電話番号、所属する医院。これらを人が読む文章だけでなく、AIが構造として読み取れる形式で専門家ページに宣言していきます。全国の同名医院から切り分けるには、名前や紹介文よりも、こうした識別情報のほうが強く働きます。

あわせて、「引き算」「その人のオリジナル」といった先生固有の概念も、先生と結びついた語として明示します。概念名だけで検索されたとき、提唱者へたどり着く経路を作るためです。

これらの効果は、次回以降の定点観測で確認します。

数字が下がった回も、そのまま出す理由

私たちが3ヶ月ごとに同じ質問を投げ続けているのは、良い数字を集めるためではありません。

何が起きているかを説明できる状態を保つためです。

認識率が下がったとき、それが情報不足なのか、取り違えなのか、AIの仕様変更なのか。原因を切り分けられなければ、次の打ち手は選べません。今回下がった理由を特定できたからこそ、次にやるべきことが決まりました。

上がった回だけを報告する検証は、下がった回に何も言えなくなります。それでは、専門家の思想を長期の資産にするという仕事にはなりません。

鈴木歯科の取り組みは、まだ途中です。次回もそのまま報告します。


鈴木 規之先生の専門家ページ

あなたの診療哲学も、言語化できます

専門家としての思想は、すでにあなたの中にあります。必要なのは、それを引き出し、構造化し、世界に公開することです。

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執筆者

専門家が持つ思想・判断基準・暗黙知を、書籍・白書・構造化コンテンツとして一次情報資産に変換する事業「Expresso(エクスプレッソ)」を運営。
医療・士業をはじめとする規制業種の専門家を対象に、思想の構造化からKindle出版・白書制作・AI参照固定・プレスリリース配信までを一貫して設計・実行している。
「本物が、正しく選ばれる社会へ。」をミッションに、専門知を社会に残る知的資産として構築することを専門とする。