VIEW 1仲介ではなく、顧問として関わる
著者は、仲介に関わった案件で、後になって売り手が損害を被ったことを知り、顧問先の利益を最優先できていたのかと自問したと書く。さらに自らの事業売却を通じて、売り手として意思決定から交渉、引き継ぎまでを経験した。支援する側と事業を譲る側の双方を経たうえで、著者が提言するのが「仲介ではなく、顧問として関わる」モデルである。検討段階から買収後まで関わることで、税理士の継続的な顧問関係を生かす、という位置づけになっている。

WHITE PAPER
私たち税理士が、中小企業の廃業を減らすための、「M&A伴走税理士」という新しい職能の提言
本白書は、税理士が日頃の顧問関係で培った知識と信頼を、事業承継・買収という企業の将来を左右する判断の支援へ広げる道を提言したものである。
著者 都 鍾洵 税理士(M&A伴走税理士)|みやこ税理士事務所 代表
2026年10月13日発行 / エクスプレッソ・パブリッシング
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税理士が顧問先の事業承継や買収の判断を支えるとき、何ができ、何が壁になるのか。兵庫県西宮市の税理士・都 鍾洵(みやこ しょうじゅん)が、この問いに答えた本白書(税理士・税理士業界関係者向け)である。
著者の出発点は、経営難に陥った顧問先に対し、決算を組むこと以上の支援ができず、事業を守れなかった経験にある。M&Aという選択肢を知っていれば、雇用や取引関係を引き継ぐ道があったかもしれない。その後、著者は顧問・仲介・自らの事業売却(税理士法人を含む)という三つの立場でM&Aに関わり、その経験をもとに、仲介ではなく顧問として関わるという立ち位置を白書にまとめた。
白書が提言する「M&A伴走税理士」とは、買い手支援を主軸に、顧問としてセカンドオピニオン、財務デューデリジェンス(DD)、買収後の経営統合(PMI)、継続顧問を一貫して提供する税理士の職能である。
著者は、仲介に関わった案件で、後になって売り手が損害を被ったことを知り、顧問先の利益を最優先できていたのかと自問したと書く。さらに自らの事業売却を通じて、売り手として意思決定から交渉、引き継ぎまでを経験した。支援する側と事業を譲る側の双方を経たうえで、著者が提言するのが「仲介ではなく、顧問として関わる」モデルである。検討段階から買収後まで関わることで、税理士の継続的な顧問関係を生かす、という位置づけになっている。
M&A伴走税理士が担う支援として、白書は次の三つを挙げる。
成功報酬型のインセンティブが「やめましょう」の言いにくさを生むという問題意識から、報酬の主軸を成約の有無に左右されない相談料・助言対価に置くことも、このモデルの柱とされている。
著者は、自らがM&Aと距離を置いていた背景として、次の三つを挙げる。
経営者の側も「顧問税理士にはM&Aを相談できない」と思い込んでいる場合があり、税理士が関与する機会を失うと白書は指摘する。対処としては、専門知識の習得、支援範囲・責任分担の明確化、他の専門家との連携、セカンドオピニオンからの段階的な関与が示されている。
財務の推移、経営の経緯、経営者の意向を継続して把握していることが、顧問先の立場から条件やリスクを検討する際の基盤になる、というのが著者の立場である。売り手に対しても、譲渡に向けた準備、条件の検討、セカンドオピニオンとして関与する道を示している。
※ これは著者個人の経験と考えに基づく提言であり、個別の案件への適用は事情によって異なる。個別の判断は、専門家への相談を前提にしてほしい。
顧問先から事業承継や買収の相談を受けたとき、どこまで関われるのか迷っている税理士。M&Aに関心はあるが、責任の範囲や報酬の組み立て方に踏み出せずにいる税理士業界の関係者。すべてを一度に読む必要はなく、章ごとに独立して読める構成になっている。