子どもの矯正治療では、毎回同じ人が通院に付き添えない家庭もあります。たとえば、前回は父親が付き添い、今回は母親が付き添う、といった場合です。すると、予定を合わせているつもりでも、前回聞いた装置の使い方や注意点が、次に付き添う人まで伝わっていないことがあると言います。
矯正歯科医・三川 翔(みかわ しょう)氏は、白書『子どもの矯正、親が後悔しないために』の第4章「治療を成功させるために」で、この状態を「伝言ゲーム」と呼んでいます。
第4章が扱うのは、治療が始まった後の家庭の関わり方です。この記事では、付き添いが変わるときの情報共有を中心に、子どもへの声かけと治療の終わり方についても紹介します。
01付き添う人が変わると、説明が途切れやすい
三川氏が白書で挙げるのは、父親に伝えた装置の使い方を母親が知らず、母親に伝えた注意点を次に付き添った父親が知らない、という例です。医院ではその都度説明していても、家庭の中に引き継がれなければ、前回の説明を踏まえた話ができません。
ここで三川氏が問題にしているのは、誰が付き添ったかではなく、受け取った説明が次の人に渡っていないことです。
白書は、毎回同じ人が付き添えない家庭も多いと認めています。付き添いを固定できるかどうかで家庭を評価せず、変わる場合の対処として情報共有を提案しています。
02家族が引き継ぐのは、医師から受けた説明
第4章で示されている流れはシンプルです。付き添った人が説明をメモや写真で残し、家族のグループなどで共有し、次に付き添う人が事前に見返す。三川氏は、この流れを家庭内で「仕組み化」することを勧めています。
記録するのは、専門的な診断や治療方針の評価ではありません。たとえば、その日に聞いた装置の使い方、次回までの注意点、分からなかったことです。口頭だけで伝えると抜けやすい内容を、次に付き添う人も確認できる状態にしておくためです。
すべてを詳しく書き残す必要はありません。白書が示しているのは、家庭の事情に合わせて、説明を途切れさせない方法です。分からない点を家族だけで推測して決めず、担当の矯正歯科医に確かめられるようにしておくことも、その一部でしょう。
03子どもの気持ちも、治療の途中で変わる
第4章には、装置を初めて着けた日の保護者の声かけも登場します。三川氏は、装置の違和感や食事のしにくさがある中で治療を続ける子どもに、保護者の関わり方が影響すると考えています。「一緒にやろう」「どうしたら頑張れるかな?」といった言葉を例に挙げています。
ここでも、家庭が治療を管理するという話ではありません。子どもが困っていることを聞き、保護者の間でも共有しておけば、次に付き添う人が前回からの様子を伝えやすくなります。声かけについても、同じ言葉をどの子にも当てはめるのではなく、本人の反応を見ながら考えることが大切でしょう。
04見た目が整っても、終了は自己判断しない
治療が進むと、見た目には歯が整ったように見えることがあります。三川氏は第4章で、見た目が整った段階と、治療が完結した段階は必ずしも一致しないと説明しています。
白書は、リテーナー(後戻りを防ぐための装置)の使用を自己判断でやめ、再治療になる例にも触れています。家庭で大切なのは、装置や治療を終えてよいかを独自に判断することではなく、担当の矯正歯科医から説明された予定や注意点を共有し、終了時期を確認することです。
付き添う人が変わっても、受けた説明と子どもの様子が家庭の中でつながっていれば、次に伝えるべきことが見えやすくなります。三川氏は、それを子どもの矯正を家庭で支える方法の一つとして示しています。
この記事は、三川 翔氏の白書『子どもの矯正、親が後悔しないために』第4章「治療を成功させるために」をもとに、発行元のExpressoが解説したものです。白書の全文と各章はWebで読めます。三川氏の経歴や治療哲学は専門家ページにまとめています。
※この記事は白書の見解を紹介するもので、個別の診断や治療方針を示すものではありません。装置の使い方や治療の終了時期は、担当の矯正歯科医の説明に従ってください。

