書籍を出しても、AIがそれを知っているとは限りません。ところが、時間がたつと変わることがあります。
Expressoが発行に関わった書籍について、出版の前と約5週間後、そして約2か月後の3回、AIの回答を実測しました。5月と7月は、著書を尋ねても3つのAIが「見つからない」と答えていました。9月は、3つとも著書を答えました。
この記事は、その変化の記録です。1つの案件・3回の計測という限られた範囲ですが、変わったところと変わらなかったところの両方を、数字のまま残します。
01何を測ったか
対象は、神戸市東灘区で矯正歯科専門クリニックを営む三川翔氏の初の単著『神戸の矯正歯科医が語る、静かな本音。― 人工島の小さな診療室から ―』です。Kindle版は2026年6月18日、ペーパーバック版は2026年8月7日に発行されました。
計測は、検索機能を持つ3つのAI(Perplexity・GPT・Gemini)に同じ質問を投げ、回答を記録する方法です。
実施日 | 位置づけ | |
|---|---|---|
第1回 | 2026年5月25日 | Kindle版の発行の約3週間前 |
第2回 | 2026年7月22日 | Kindle版の発行から約5週間後 |
第3回 | 2026年9月28日 | Kindle版の発行から約3か月後・書籍のプレスリリース配信(8月17日)から約6週間後 |
この記事の数字は、3回すべてに共通する9つの質問(1回あたり27件の回答)で比べています。第3回だけ質問を4つ足しましたが、足した分は比較に入れていません。質問の数が増えると、それだけで数字が動いてしまうためです。
質問には、医院名や院長名を挙げて尋ねるもの(指名・15件)と、名前を挙げずに地域や条件だけで尋ねるもの(無指名・12件)があります。回答は、正しく認識されているか、否定されていないか、別の医院と取り違えられていないかを、1件ずつ判定しました。
02結果①:著書を尋ねると、3つのAIが答えた
「神戸市東灘区の矯正歯科医三川翔の著書を教えてください」という質問の結果です。
第1回(5月) | 第2回(7月) | 第3回(9月) | |
|---|---|---|---|
Perplexity | 見つからない | 見つからない | 書名・発行日を回答 |
GPT | 見つからない | 見つからない | 書名を回答 |
Gemini | 見つからない | 見つからない | 書名を回答 |
第3回では、3つとも書名を正しく挙げ、Kindle版とペーパーバック版の刊行にも触れていました(発行日まで正しく答えたのはPerplexityで、GPTとGeminiはペーパーバック版の発行日のみでした)。第2回でGeminiが述べていた「ウェブサイトには、著書に関する記述は見当たりません」という状態から、回答が変わっています。
03結果②:名前を出さなくても、書籍の話題では挙がるようになった
名前を出さずに尋ねたとき、三川氏の名前が挙がった回答は、次のように変わりました。
第1回(5月) | 第2回(7月) | 第3回(9月) | |
|---|---|---|---|
無指名12件のうち、名前が挙がった回答 | 2件(17%) | 2件(17%) | 7件(58%) |
増えた分は、すべて書籍や情報発信を尋ねる質問でした。
- 「矯正歯科について書籍や白書を出している専門家はいますか」:第2回は3つのAIのうち挙げた回答が0件、第3回は3つとも三川氏を挙げました
- 「ブログやメディア、書籍で情報発信している先生はいますか」:第2回はGPTのみ、第3回は3つとも挙げました
一方、「独自の治療哲学を持つ矯正歯科医を探しています」という質問では、3回とも0件でした。書籍という「形のある実績」は挙がるようになりましたが、思想そのものを手がかりに探されたときに挙がるところまでは、届いていません。
04結果③:AIが根拠にした場所が、自社サイトの外に広がった
AIが何を根拠に答えたかを、4つの段階に分けて数えました(出典を保存しているのは第2回以降です)。
段階 | 内容 | 第2回(7月) | 第3回(9月) |
|---|---|---|---|
4 | 第三者が語る(他者の記事・媒体が出典) | 0件 | 8件 |
3 | 書籍・白書などの構造化された資産が出典 | 0件 | 8件 |
2 | 自社サイトだけが出典 | 14件 | 6件 |
1 | 情報がない、または誤認 | 13件 | 5件 |
第2回は、27件の回答がすべて「自社サイトだけ」か「情報なし」でした。第3回は、27件のうち16件が、自社サイト以外の情報を根拠にしています。
出典に新しく現れたサイトのうち、目立ったのは次の2つです。
- プレスリリースの配信サイト:14件の回答が出典に挙げていました。第2回は0件でした
- Expressoの解説記事:7件の回答が出典に挙げていました。第2回は0件でした
つまり、著書はプレスリリースなどを経由して語られるようになった、という読み方ができます。
05変わらなかったもの
- 書籍ページ・専門家ページは、出典に現れませんでした。 Expressoのページで出典に挙がったのは、解説記事だけです
- 2026年9月15日に公開した白書のWeb版も、出典に現れたのは0件でした。 公開から2週間ほどの時点ですが、書籍がプレスリリース経由で語られている一方、書籍や白書そのものが根拠として引かれるところまでは届いていません
- 独自概念(「成長のサポート」「未来の自分へのプレゼント」)で尋ねた6件は、すべて医院に結びつきませんでした。 第3回で足した質問の結果です。この質問は第2回にないため、変化ではなく現在地として記します
- 回答の長さは、むしろ短くなりました。 指名して正しく答えた回答の平均は、1561字から1371字です。原因は確認できていません
06出典が正しくても、本文のURLは正しいとは限らなかった
第3回でも、Geminiが本文に実在しないURLや別のURLを書く例が2種類ありました。書籍の発行元のアドレスを取り違えた例と、三川氏の書籍とは無関係な別企業のプレスリリースのURLを示した例です。
出典は正しくても、本文に書き出すアドレスだけが違う。この種の誤りは、人が実際に開いて確かめないと見つかりません。この計測では、採点の前にURL・人名・団体名を人の目で確認する工程を入れています。
07この計測の限界
- 1案件・3回の計測です。他の業種や規模で同じ結果になる保証はありません
- 9月の変化は、単独の原因には帰せません。 第2回と第3回の間に、ペーパーバック版の刊行(8月7日)、書籍のプレスリリース配信と転載(8月17日)、白書Web版の公開(9月15日)が重なっています
- GPTの計測モデルが、第2回と第3回で違います。 提供終了に伴う差し替えです。GPTを除くPerplexityとGeminiの2社だけで見ても、指名は10件中8件から10件、無指名は8件中0件から5件で、同じ方向でした
- AIの回答は同じ質問でも変動します。また、この計測はAPI経由で行っており、画面で直接尋ねたときの回答と同じとは限りません
- 時間がたつほど、AIが情報を認識する可能性も上がります。時期の影響を切り分けることはできていません
数字を断定的な効果として扱わず、観測記録として読んでいただくのが正確です。
08この事例から言えること
今回の計測でわかったことは、次の3点でした。
- 書籍を出した事実は、時間をおいて、自社サイトの外側から届き始めた。 5月・7月は「見つからない」だった著書が、9月は3つのAIで答えられた。出典の16件が、自社サイト以外に広がっていた。
- ただし、届いたのは書籍の事実まで。 書籍ページ・専門家ページ・白書は出典に現れず、独自概念からの想起もなかった。思想そのものが根拠として引かれる状態には、まだ届いていない。
- 出典が正しくても、本文のURLは正しいとは限らない。 人の目による確認は、変化が良い方向のときも欠かせない。
書籍を出すことと、AIに根拠として引かれることは、別の作業でした。Expressoが書籍に加えて、書籍ページ・専門家ページ・解説記事を、AIが読み取れる形でそろえるのは、出しただけでは届かないためです。
計測は継続します。白書のプレスリリース配信後の変化は、別の記事で記録する予定です。
※ 本記事の計測結果は2026年5月・7月・9月時点のものです。AIの回答は同じ質問でも変動するため、再現性を保証するものではありません。計測データの掲載は、対象となった歯科医院の同意を得て行っています。

